肩が凝っている。
これは由々しき事態なのだ。
私はこれまで肩が凝ったことがない。
肩が凝る、という感覚は私とは無縁だったはずの私に、美容師が話しかけてきた。
なんと。齢-よわい-を28となってもなお、凝るという感覚と無縁で過ごしてきた。
大学生時代にギターなどの大荷物を普段から背負って生きてきたから、もしかすると既に私の肩は凝りに凝り尽くしていて、私が最近、「凝っている」と認識する前から既に肩自身はとっくに「凝っていた」のかもしれない。肩からすれば「何を今更…フッ…」と言ったところだろうか。何を言っているんだお前は?誰なんだお前は?篠野です。
美容師が私に「凝ってますね」と言い放ったあのときから、私の人生の歯車は少しずつ狂い始めてしまったのかもしれない。
私の肩は本当に凝っているのだろうか。
凝っているのは肩じゃなくて心なんじゃないか。そう考えた。
肩が凝っているのか、私が凝っていて単に肩が凝っていると美容師が捉えただけなのか、私はスパイラルパーマのかかったクルクルの頭で考えた。
肩は何も言わずに黙って私の右肩に鎮座している。
お前も何とか言ったらどうなんだ。
私は肩に話しかけた。最近右型の口数がやけに少ないと感じていた。
返事はない。
私はしぶしぶ左肩に向かって、右肩の元気なくないか?と尋ねた。
左肩からも返事がない。
どうしたんだ。私の両肩。
なんで何も言ってくれないのか。
或る晩、ベッドに突っ伏した私。
嫁に頼んで右肩を押してもらうように頼んだ。
最近無視している腹いせに、ちょっと肩には悪いが、痛い目を見て貰おう。
グリッ
ウウウアアウウウウワアアアアアアアアア気持チイイイイイウウアアウウアイウイイイイイイイイアアアアアアアア!!!!!!
肩、凝ってます。
最近右肩が特に口数少なくなってきたというか、
もう何にも話さないし、張りつめた感覚があって何となく重たい感覚があるんだけど、
肩をマッサージされるととんでもなく気持ちいいので
もうむしろ肩が凝っていた方が幸せなんじゃないかと思ってしまう、
肩凝り初心者の篠野でした。
人生、マッチポンプですよ。
おしまい。