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こんにちは。
今日は音楽のお話。
ある故人のお話。
天国ってWi-Fi立ってるのかな。
そしたら読んでくれるかな。
しんみりしたところで今日のトピックです。
いや、やめます。
ごめんね。飛ばされたくないので順番に読んでいってください。
ぼくのりりっくのぼうよみ、知ってる?
知ってますか?
2012年から活動をしていたアーティストで、
悲しきかな、2019年1月に逝去されています。
楽曲「sub/objective」でいわゆる「バズり」を果たし、
「文学的」「天才」と言われるようになりました。
彼が「天才辞めまぁ〜す!」とかファンのことを「説教ババア」とか言って大炎上させて満を持してリリースしたアルバム、「没落」が本当に好きなので、
今日はこのアルバムに絞って語らせていただきます。
天国か、地獄か、無か、分からないけど、
ただ、ぼくのりりっくのぼうよみに寄せて。
アルバム「没落」について
まずは、曲目です。
- 遺書
- あなたの手を握ってキスをした
- 二度と来ない朝
- 断罪
- 人間辞職
- 輪廻転生
- 僕はもういない
- 祈りを持たない者ども
- 曙光
- 没落
- 超克
ぜひストリーミングサービスで
最初から通して
聴いてください。
全曲紹介します。
届け、私の一万字。
では、その文化的遺産に触れていきましょう。
1.「遺書」
アルバムの幕開けとなる一曲目。
注目するべきはこの歌詞。
いや、歌詞というよりも、遺言です。
伝えたいことを要約するならば、私的には、こうです。
これから、「ぼくのりりっくのぼうよみ」は死にます。
これは私が丹精込めて作り上げた偶像であり、
私はそれに縛られていました。
私が作った偶像は、私が壊します。
「ぼくのりりっくのぼうよみ」であることが彼にとって苦痛だったことを赤裸々に綴っているこの曲。
”あなた”に届いたかはわからない
ただ此処にこの言葉は残っている
ぼくのりりっくのぼうよみ 遺書 歌詞&動画視聴 - 歌ネット
この一節です。
「ぼくのりりっくのぼうよみ」の顔で、
”彼”が本当のことを伝えようとしている。
でもそれは「ぼくのりりっくのぼうよみ」である以上、
伝わることはない、と歌っています。多分ね。
永すぎる生の中で
交差したことを祝いましょう
それ以上は望まない
それ以上は望めない
ぼくのりりっくのぼうよみ 遺書 歌詞&動画視聴 - 歌ネット
切なさが伝わりますでしょうか。
本当に切ない。
この重いテーマがアップテンポに乗せられてガンガンと殴ってきています。
そして、この切なさは、
「ぼくのりりっくのぼうよみ」の”死”の幕開けを表しています。
音楽的な個人的に好きなポイントは、
バチバチに効いた頬をビンタするようなビート。
さらにサビ前のシンコペーションのブレイク音です。
デン!っていうところ。めちゃ好き。
しかも切ないなんて。相まってヤバい(語彙力)
あとこのメロディ、ギターのアドリブソロのような主旋フレーズがこの曲では8bit調になっているところも、何というか懐かしい気持ちと、フレーズの新鮮さもあって、新鮮な気持ちにもさせてくれます。
2.「あなたの手を握ってキスをした」
誰かのせいにしたくてさあ
あなたの身体を持って駆け出した
ぼくのりりっくのぼうよみ あなたの手を握ってキスをした 歌詞 - 歌ネット
うん。
ここで「ぼくのりりっくのぼうよみ」を殺してしまったようです。
わたしのせいでこうなったの?
あなたが私を殺したの?
ぼくのりりっくのぼうよみ あなたの手を握ってキスをした 歌詞 - 歌ネット
自問しています。でもこうするしかなかったんだろうな。
苦悩を抱えて追い込まれた人ならわかるよね。
晴れやかな空と思い出が 輝いた
あなたの手をぎゅっと握って キスをした
海辺に咲かせた真っ赤な炎に 咲いた炎に
あなたの腕を 今放り投げた
さよなら
ぼくのりりっくのぼうよみ あなたの手を握ってキスをした 歌詞 - 歌ネット
それでも彼は否定しないところが、
とても暖かいなと思います。
愛をもってちゃんとお別れを告げています。
音楽的観点でいうなら、
ビートがカッチカチで良い。
ドン!バン!
こういうシンプルなビートが曲の現実味というか説得力を強めています。
あと聞く人が聞いたらわかると思うんだけど、King Gnuみたいですよね。
ビンゴです。King Gnu のギター、常田さんが手がけている曲です。
ワウギターが完全にKing Gnu節入ってますね。King Gnuもかっこいいい。
3.「二度と来ない朝」
足りない あたしには尊厳が
こんなにも 汚されたくないものを
踏みにじられても笑えるの
ぼくのりりっくのぼうよみ 二度と来ない朝 歌詞 - 歌ネット
つらい時期ですね。変化を受け入れなくちゃいけない。
一人称が変わっているのに気づきましたか?
自暴自棄になりそうになってるのかな。
この曲のサビのボーカルのメロディがいいですね。
なんというか、私ブルーノートめっちゃ好きなのよ。
私事ながら当方、作曲はするんだけど全部感覚と鼻歌で作っているので、実の所、音楽用語は詳しくなくて。
これってブルーノートってことでOKなの?このワルい音程というか、そういうやつ。おしえてわかる人。
4.「断罪」
許して許して許して……。
嘘じゃない、あたしが悪かったの。
ぼくのりりっくのぼうよみ 断罪 歌詞 - 歌ネット
なんだか暗くなってきました。
誰かと喋ったり山登りしたりした方がいいよ……。
曲調がすごいことになっていますね。
テンポとか、聴いてる人がノッてくれるかとか、
そういう領域の話じゃないんですよきっと。
これはポップに喧嘩売ってますね。クール。
うねりを上げて悩んでいる様が表現されています。
初めて聞いた時はえも言われぬ気持ちになりました。
5.「人間辞職」
人間 人間
人間なんてオワコンなんだよ
この社会に辞職届を
叩きつけます
私は 私は
責任取って 人間辞職
人間を辞すことで
命を全うしていきたいと思います
ぼくのりりっくのぼうよみ 人間辞職 歌詞 - 歌ネット
次の領域に来た感じがしますね。
ヤケクソとも取れますが、
ここでいう「人間」について、しっかり考えてみてください。
私の生命は私のもの
私の生命は私のもの
人間なんかのものじゃない
私はこの曲を前にすると絶賛、素直ちゃんになっちゃうので、
「君は君だけのものだよ」という気持ちになります。
あなたはどう考えますか?
このジャジーな曲調に載せたドス黒い歌。
みんながこれをちゃんと考えないといけないと思います。
私は人間なのか?人間とは何なのかを考えましょうね!(暗黒)
私的考察では、というか当時の「ぼくりり」自身もインタビューで語ってるところがあると思うんだけど、
社会に馴染む、生きていくための顔としての「人間」は、
周りから天才と言われてきたけど、
その顔は本当の自分じゃない、という葛藤が耐え難くなったので、
自分を終わらせる、自己帰結を図るという意味を込め、人間を辞める。人間を辞職する。ということだと思います。
6.「輪廻転生」
だんだん説明が減ってきました。
音楽を口で語るのもやはり野暮なものですね。
犯した罪は消えない
あの傷は償っても治癒することはない
いとも容易く 奪い取った
この目には煤けて見えた
石ころだって 誰かの宝
今更気付いた ところで
もう遅い もう遅い
ぼくのりりっくのぼうよみ 輪廻転生 歌詞 - 歌ネット
書いてて辛くなってきました。
決別を経て、自己嫌悪を経て、
たどり着いた境地が地獄だった。
佳境に入ってきているようです。
後半に向けて加速していくビートも、終わりを思わせて、切ないです。
7.「僕はもういない」
ここがこのアルバムで言うターニングポイントかもしれません。
MVは「ぼくのりりっくのぼうよみ」が最初に活動を始めたニコニコ動画のテイスト。
当初を思い出す、初心に帰るような映像ながらも、
「僕はもういない」
と歌っています。
紡いできた言葉たちは
色を無くし 乾いたまま佇んでいる
輝いていたはずの過去が
笑顔でさらりと傷を抉る
ぼくのりりっくのぼうよみ 僕はもういない 歌詞 - 歌ネット
決別した「ぼくのりりっくのぼうよみ」が、
彼を傷つけています。
よくも殺したなと。
それでも彼は受け入れます。
※個人的な解釈です。
巫山戯た仮面は
形さえ記憶には残っていない
偽らぬ声で君に告げた今
「僕はもういない」
ぼくのりりっくのぼうよみ 僕はもういない 歌詞 - 歌ネット
少し光が差しているんです。
ああなんか泣けてきたよ。頑張ったね。
曲はというと、耳馴染みの良いギターアルペジオ(アルペジオではないか?)をベースに組み上げられています。
私はこの曲で「sub/objective」を思い出しました。
この切なさ、憂鬱が「ぼくのりりっくのぼうよみ」の真骨頂なのかもしれない。
最後のこのアルバムはまさに集大成に相応しく、命を燃やしているよ。
”羨望も嫉妬も喰らうことで大きく育つ糧”
"魂に上等な餌をやる"
う〜ん。乗り越えていってるね。最高にかっこいいね。
8.「祈りを持たない者ども」
身に余る愛 頂いた世界
胸を張って 言葉を刻む
不格好でも大丈夫
この一瞬だけでもう生きていける
ぼくのりりっくのぼうよみ 祈りを持たない者ども 歌詞 - 歌ネット
アルバムの中では、ここからが新しい境地に入っている感じ。
喜びに満ちていることを表現しているのに、
曲からはドロドロしたものを感じませんか?
この表現本当にすごいよ(語彙力)
なんだろう、この、誰もいない感じ。
耳を割るような破裂音のバスドラムのせいか?
金属音のようなシンセサイザーの音のせいか?
もうなんだかよくわからないけど、とにかくきれいですね。
この曲からのアルバムの独特な流れが本当に好き。滅多に体験できないよこれ。
9.「曙光」
(しょこう)と読みます。
夜明けに差してくる太陽の光のことだそうです。
めっちゃカッコいい単語ですね。
永遠のプールに潜り続ける僕は
僅かな酸素をもう使い果たした
虚無に飲まれて 死んでいく
ぼくのりりっくのぼうよみ 曙光 歌詞 - 歌ネット
ここまで来たら行く末を黙って見届けるよね。
終わりにむかって加速するようなビート、
反してたっぷりと歌うようなサビのテンポチェンジとブレイク。
こりゃ格好いいよ。なんというかラスボスの前みたいな気持ちですよ。
10.「没落」
ショートMVとフル音源両方載せます。
酩酊の隙間で
小さく笑え 没落の果て
大敗を喫した人生
ゆえ宿る新月
ぼくのりりっくのぼうよみ 曙光 歌詞 - 歌ネット
「ぼくのりりっくのぼうよみ」は失敗だったという事でしょうか。
朽ちていく様が地獄の中でゆらゆら揺れているようです
(あまりよくわからないかもしれない)
ドロドロとした暖かさがありますね。
大昔の箱型カメラのシャッター音のようなビートと、
サスティンを削った、割れたシンバルのような金属音、
排気ガスのような低音。
なんていうかMVも相まってだけど、ガラクタで作られたような悪戯っぽい楽曲ですね。
11.「超克」
最後の曲です。 (ちょうこく)と読み、困難に打ち勝つという意味があります。
もう歌詞抜粋しません。選べない。
曲を聴きながら、
すべての歌詞を読んで、しっかりと、彼が乗り越えて得たものを確認してください。
曲についてはただ言うなら。ラスボス。
R.I.P.
いかがでしたでしょうか
どう感じましたか?
私のこのアルバムの感想というか意見をまとめたいと思います。
人としての絶望を歌っている
過剰に考えすぎているのかもしれないけど、
このアルバムで、生きていく上での絶望を歌っていると思います。
これは誰にでも当てはまる。
社会を生きていく上でいえば、私たちにも当てはまる、外の顔と内の顔の二面性に苦しんだことを「人間」と「自分」として対比しているんじゃないかなあと思います。
とんでもなくデカい闇についてここまで赤裸々に歌っているアルバムを、私は知りません。
解が生まれたわけじゃないところも、とても人間らしい。裸だと思う。
このアルバムで、しっかりと
「ぼくのりりっくのぼうよみ」は死にました。
すべて見届けることができたのだろうか。
すべて受け止めることができたのだろうか。
綺麗に終わることって本当に大事だと思います。
金色のガッシュベルとかね。
ダラダラ惰性で付き合ってても苦しさしかないのよ。
それを「ぼくのりりっくのぼうよみ」は体現したと。
これが評価されないのは間違っている
これ私が例えば有名音楽ライターで、声の大きい人だったら、どれだけいいことかと思うんだけど、現実そうじゃないから、書きたいように書かせてもらっています。
私としては、このアルバムはJ-POPに一泡吹かせた歴史的1枚です。
ちゃんと殴ってるしちゃんと喰らってるよ。
次は多分七回忌で「ぼくのりりっくのぼうよみ」に会えるかもしれないんだけど、そんな時に例えば音楽マガジンが無視できないくらいのボリュームを書いてやろうという次第です。
個人的感情ですが、私には4つ下の弟がいまして、
「ぼくのりりっくのぼうよみ」の中の人と同い年らしいです。
やっぱ弟くらいの年の子がこんだけ苦悩してるとね、
抱きしめてあげたくなっちゃうのよ。
そんな贔屓目抜きでもこのアルバムは名盤ですけどね。
それでも生きていくしかない
私たちはアーティストとしての顔とか、逸脱して乖離した二面性がないから、このアルバムみたいに明確に、その一面を殺すことはできない。
自分として今は生きていくしかないんだなと感じられるアルバムです。
殺せないけど、生まれ変わることは、いつだってできる。そういうメッセージもあります。
本当に死んだらダメなんだよ。
エンターテイメントとしての会心の一撃
本当に喰らったよ。
当時「ぼくのりりっくのぼうよみ」が「天才を辞めます」とか言ってSNSで炎上していたのも、ニュース番組「スッキリ」で「オワコンなんだよ」って煽り全開で歌って視聴者をドン引きさせたのも、全てはこのアルバムの為だと思うと、もう本当にエンタメとして完成されているし、もう映画だよこれは。美しい。
このアルバムを作っている時、辛かっただろうな
と、私は思います。詳しくないだけかもしれませんが、これを思わせるような作品って滅多にないと思うんです。
中の人の彼は、本当に「ぼくのりりっくのぼうよみ」を殺して決別するつもりで詞を書いたと思うよ私は。かなり痛かったんじゃないかな。
結果、しっかり決別できてるけどね。これが彼の望みだったと。
偽の自分を殺して解き放たれたかったから、全身全霊で自決したような壮絶さがこのアルバムから感じられます。
中の人がこの「没落」を聞いても、鼻で笑いながら酒でも飲めるようになっててほしいね。
日本の音楽史に載せるべき
私はそう思います。
J-POPに対してケンカを売りながら音楽の深淵を少し覗いた傑作。
一人のアーティストが、ここまで苦しんで作った一枚を、
音楽として知るべきだとさえ、思います。
一つの音楽が終わることは、こういう地獄を孕んでいるんです。
それを知ってほしい。知ったうえで、音楽を好きになってほしい。
私含めて、多分、曲を作ったことがある人とか、絵描きとか、お笑い芸人とか、そういうクリエイティブに0から1をコンスタントに生まなければいけない人たちって、少なくともこういう深淵を覗く行為ってのを経験していて、この苦しさっていうのはわかってもらえると思うんですが、どうでしょうか。
音楽の授業でもさ、例えばクラシックの巨匠がどういうことに思い悩んで死んでしまったのかとか、どういうことに苦しんでこの曲が生まれたのかとか、そういうところを踏み込んでいくと、生徒も他人事じゃいられなくなって興味が湧いてくるんじゃないの?とか私は勝手に思うんですけど、どうでしょうか。
ああ、モーツァルトも人間なんだなって姿勢になって興味が私なら湧いてくるけどなぁ。
葬式
「ぼくのりりっくのぼうよみ」の葬式の映像が残っていますので、
時間のある時にゆっくりと看取ってください。
このライブを以て、「ぼくのりりっくのぼうよみ」は永眠致しました。
これが無料だよ。いい時代になったよね。
少しネタバレをしてしまうのかもしれないけど、ぜひこの映像の「曙光」を聞いてほしい。
「ぼくのりりっくのぼうよみ」は、この瞬間のためにあったんじゃないかとすら思える。
この感情に意味はないのだろうか。
書きながら、だってもう死んじゃった人に対してこんなに好きに語ってもさあ、、、って思っちゃった。
きっと届かないもん。
虚空にしか届かないんじゃないかと思うんだけど。
それでも、私のこの気持ちはまだ生きているので、
これを綴ることには意味があるんだと私は思うことにする。
日本にはお盆っていう文化があるし。
戻ってきたら昔みたいにインターネットでエゴサーチして欲しいものですね。笑
さいごに
「ぼくのりりっくのぼうよみ」は人間の辞職と共に死んでしまいましたが、
とある、「Dios」というバンドがいまして。
ちらっと、私の好きな曲を載せておきます。
www.youtube.com
歌声が、亡き「ぼくのりりっくのぼうよみ」に
どことなく似ています。
君は、どこまでいっても音楽家だな。
音楽の神に呪われてんよ。最高に。
1stアルバムがついこの間リリースされたばかりなので、
ぜひチェケラしてください。
ぼくのりりっくのぼうよみは、葬式でちゃんと成仏できたんだろうなぁ。
未練なんか一ミリも感じなくて、確実に次に進んでいる。嬉しいです。
でも、やっぱり寂しいね。
おまけ
MV「輪廻転生」で
本当に一瞬だけ出てくる、とある箇所があります。
これがそのスクショ。
よく見ると、
撲乃離陸乃亡黄泉
(ぼくのりりっくのぼうよみ)
って当て字になっていますね。
んでこれ。私が大好きなYouTuber
東海オンエアの動画のスクショ。
お わ か り い た だ け た だ ろ う か
撲乃離陸乃亡黄泉、見つけてみてね。
これに気づけたファンはどれくらいいるんでしょうか。
おしまい。