まず最初に。
まだ君が生きているのに、
さらには、症状が回復傾向になって、君は今でも全力で頑張っているのに、
こんなメッセージを残すことを許してほしいです。
このメッセージは、いつか必ず来てしまう、その日の為に、
今の私が、私の為だけに残します。
また会いに行くからね。今、私はこんな気持ちを君に抱いているよ。
愛犬、トイプードルのショコラへ。
君を、ショコラと名付けたのは私です。
13年前、君はわたしたち家族のもとにやってきました。
そして、じきに君の一生は幕を下ろそうとしています。
寂しいですね。
君の一生が私に与えたものは、言葉が陳腐になるほど美しいものです。
私がうつぶせで寝転がると、
決まって君は私のもとにやってきて、
私の脚の間にすっぽりと収まって休んでいましたね。
夏は暑かったし、冬は暖かかったよ。
私が右手を下ろすと君はそこに首をすり寄せてくるよね。
私にとっては、君の手足では届かない痒いところを代わりに掻いてあげられている気分でした。
「さんぽ」という三文字を発しただけで、
テンションが上がってリビングを駆け回る姿とか、
散歩が終わって玄関で君の足を拭くとき、
「綺麗になるから!」と言っていたら、
嫌がらずに足を私の手に添えてくれるようになったこととか。
ふざけ半分で、
「(二階の部屋にいる)弟を呼んできて!」
と、君に頼んだ時、
君は私を見た後、階段を駆け上がっていたと思えば、
弟が君を抱えて降りてきたこととか。
人の言葉を話すことができないのに、
君は人の言葉が分かるなんて、ずるいです。
私たちには、君の言葉がいつまでたっても分かりません。
頭の悪い人間め!と馬鹿にしてください。
私たちに伝わらないことも沢山あったことでしょう。
もどかしい気持ちを沢山飲み込んだことでしょう。
それでも、
君に裏表が本当にないんだと感じてから、
君の一挙手一投足はいつも全身全霊だと感じてから、
君がいつも全力で生きていることを本当の意味で理解してから、
もっと言えば、初めて私たちの家に来てくれた日から、
君が幸せだと心から思ってもらえるように一緒に暮らしていくしか、
私たちにできることはなかったのです。
君は、どんな気持ちで私たちと暮らしてくれたのでしょうか。
今、何を思っているのでしょうか。
そして君は、もう一つ、ずるいことをしようとしています。
それは、私たちを残して先に逝ってしまうことです。
天国とか地獄とか、自頭の堅苦しい私は普段からそんなことばかり考えてしまうのだけれど、
それがどれほど現実味を帯びていないことかと、痛感しています。
心から、天国で悠々自適に暮らしてほしいと願います。
君の行く天国には、私の代わりに君の痒い所をピンポイントで掻いてくれる人はいるのでしょうか。
私の脚よりもすっぽりと収まって休める場所は天国にはあるのでしょうか。
君の痒い所を代わりに掻いてあげられる人が私じゃなくなってしまうことが、
すっぽりと収まって休める場所が私の脚じゃなくなってしまうことが、
本当に寂しいです。
私もいつか、そっちに行くときには天国に行けるように、
また君とじゃれ合えるように、精一杯、生きていきます。
君が本当に幸せだったかどうかは、私たちにはわかりません。
それでも、君がくれたものは、幸せそのものでした。
それを君が理解してくれていると、私は信じることにします。
ムズ痒い言葉しか出てこないんだけど、ほかに正しい言葉が思い浮かばないなあ。
君が私たち家族に与えてくれたものは、奇跡の塊みたいなものでした。
君の生きる姿が、
君と暮らした奇跡みたいな日々が、
愛に満ちた日々が、
私たちの人生を、心を、
いつも優しく、いつも豊かに、いつも美しくしてくれました。
奇跡は、君でした。
ありがとう。