歓喜天倶楽部

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日本一多趣味のテキストライター篠野が魅せる。日本一多趣味なブログ。

【ピンク色の悪魔】コーラックを飲んで死線をくぐった話。



ウンコ。

いきなりステーキよりもいきなりで申し訳ないが、
今日この記事では「便」について伏字することなく話を進めていく所存だ。
排便中の方こそ必見である。

食事中に排便の話をすんなり読める人はさすがに頭がおかしいのかもしれないが、
ヒルメシ時にこんな記事をアップロードしてしまう私も同罪だろう。

現に私は「食事中に下品なコンテンツ嫌嫌センサー」が壊滅的に壊れていて、
この間なんかは滅茶苦茶毛深い人間のすね毛をガムテープで剥がしまくる動画を見ながら
当たり前のように飯を食うことが出来ていた。
冷静に考えてめっちゃキモイ。ガムテープで「こんなに取れたw」とビッシリ張り付いたすね毛を見せられながら
当たり前のようにイカスミ焼きそばを食っていた。「うわ~キメ~」とか言いながら。

麻痺しているのかもしれない。
さすがにこの記事を読みながら飯を食える人は屈強過ぎる。
心の底から讃えたい。大地讃頌。では、参る。
タイミングを改めるなら、今だ。



私は天上天下唯我独尊、激越の便秘人間である。

物心ついた時から便秘で、パンピー(一般ピーポー)が、
毎日ウンコしてるなんて考えもつかなかった。

私には「毎日ウンコをする」という常識が抜け落ちている。

一週間ウンコが出ないのも別に良くある話だ。
さすがに二週間近く出ていないと「ちょっと出てないな?」と思う。そのくらい便秘だ。

人間が毎日ウンコをするわけがないと信じて疑わなかった私は、
好きな女の子や、今を時めくアイドルはウンコしないという説を信じるのは容易だった。


ある日、「いつからウンコしてなかったっけ?先々週くらいか?」と思った私は、
知人に公開しているツイッターのアカウントで、こう、呟いた。


「二週間💩出てないし、もう私は便秘の神」


すると、普段リプライを飛ばし合わない友人たちから反応を貰った。
みんなウンコ好きなんだな。ウンウン。


「二週間ウンコでないのはもうお前ウンコそのものだろ」

「うんこマン」


心無い言葉に私は憤慨した。フンだけに。
嫌なら呟くなという話だが。
そして私は、声を大にして反発すべく、こう呟いた。


「毎日ウンコしてるお前らの方がよっぽどウンコだろうが!!!!!」


と。



そうして、私は自分が便秘体質であること、
人間は基本的に毎日ウンコするということ、
本田翼もウンコするんだということを思い知った。
世界は、残酷だ。
私の常識が覆った瞬間だった。


そうこうして、私はこう思ったのだ。

毎日ウンコしてみたい!


とはいえ、何から始めたらいいのかわからない私は、
薬局で便秘薬を買った。「コーラック」というやつだ。
私は初めて便秘薬を飲むことにしてみた。

一抹の疑問が私を取り巻いた。

便意がないのに本当に出るのか?

二週間分出てしまうのだろうか?

体の中にある便を全て出し切った”私”は本当に私なのだろうか?

生まれ変わったら、私は何になるのだろう。猫にでもなれるのだろうか。


私は息を呑み、宮沢賢治よろしく、未だ名のない猫のような気持ちで、コーラックを飲んだ。
あたたかい、春の日差しがリビングを照らしていた。
吾輩は猫である便意はまだない。


しばらくして、お腹がグルグルと喚き始めた。
久々の便意との再会を分かち合いながら、トイレへ向かう。
よお、元気してたか?そうかそうか。俺は転職してさ、エンジニアになったんだよ。お前は?

トイレに腰掛けると、旧友の便意が猛威を振るった。
便意と猛威で韻をフンでいることは、言わなくてもわかるか、ははっw(死)

ギュルギュルとけたたましい爆音を轟かせ、
私の肛門のダムは少しずつ決壊していった。

久々の排便を心のどこかで楽しんでいた。
その後、込み上げてくる或る感情に支配されるとは、この時は知る由もなかった。


腹が痛いのだ。


「お腹痛い」がこの世の中で一番嫌いな感情だ。
世の女性には本当に頭が上がらない。私が女だったら気を病んで自害してしまうかもしれない。
それくらい嫌いだ。

高校生の頃、いじめられていて、学校に行こうとすると腹が痛くなって
学校には間に合わない時間まで駅のトイレでやり過ごしていたことを思い出してしまうから。

と、美談のように語るが、シンプルに腹痛はつらいからだ。
気持ち悪いときは手を口に突っ込んで吐けば多少改善されるが、
腹痛は改善方法を知らない。

私の決壊したダムは留まることを知らない。そして何よりも腹が痛い。
決壊したダムによる村の被害を最低限にすべく、私はトイレのレバーをひねる。
トイレの吸音と共に大量の便が流れていく。ここで諦めてはいけない。失った人や家は戻らない。

決壊するダムの轟音が体内をこだまする。

私は排便とトイレのレバーをひねる行為を交互に続けながら、私は腹痛が収まるのを待った。
もはやそのリズムにはある種の美しさがあった。
新たなバンド、「VEMPY(ベンピー)」の結成だ。
そしてこれは私の決壊するダムとトイレの流れる音のセッションだ。
ここは孤独なダンスホール。二階席、聞こえるかァー!

しばらくして、ダムの決壊が止まった。
ようやく収まったか、と思った刹那、再び猛烈な腹痛が襲う。
さらにその腹痛は第一波よりも激しく痛みを伴うものだった。

私は、脂汗をかきながら、う~う~と呻きながら会場のアンコールに応えた。

20分くらいだろうか、気力も体力も全てをトイレに吸い取られた私は、
多少なりにもマシになった腹痛に耐えながら会場を後にした。

リビングに向かうその姿は、以前の私ではなかっただろう。

そのまま力尽き、私は気を失うように眠った。
パトラッシュ…僕はもう疲れたよ…


何時間が経っただろう。いや、何分だろうか。わからない。

私は再び目を覚ました。腹痛でだ。

すぐさまトイレに駆け込み、延長戦へともつれ込む。
先ほどの東京ドーム公演を無事成功に収めた筈だったが、
全国ツアーはまだ始まったばかりだ。

その後、東京ドーム公演、ナゴヤドーム公演、福岡ドーム公演を終え、
私は心身ともに疲れ果て、抜け殻となったその体を四つん這いになって這わせながら、
これ以上は「本当に死ぬ」と思い、携帯電話を手に取った。
意識がもうろうとしていて、スマホのロックを解除できない。


マミー…プリーズ・ヘルプ・ミー。


私は、そのまま力尽きた。


実に3時間もの間、私は決壊するダムと腹痛という悪魔の契約の代償の支払いに追われた。
ついにはリビングとトイレを往復するだけの永久機関と化していた。
全国三か所のドームツアーも終え、力尽き、気が付いたら眠っていた。

便秘解消を望む人間と、それを必ず叶える悪魔との契約の証、それが「コーラック」だった。


普通に泣いてたと思う。
これに関してはあまり記憶がない。
恐らく、この壮絶な便秘解消劇の壮絶さを、脳が拒否したのだ。
この腹痛とまっとうに殴り合ったら、先に精神の限界が来てしまうと察知した私の脳が、
海馬との連携をシャットアウトさせたのだろう。我ながら、否、我の脳ながら、それは英断であった。


その日、夕方になり目が覚め、暴れ狂っていた私の腸内環境も平静を取り戻した頃、
私は物語の終焉に天を仰ぎ、神に感謝した。

そして私はすべてを理解した。
愛について。人間という生き物、この地球、宇宙について。
そして、コーラックについて。

天を仰ぐその両手は毛むくじゃらに変り果て、手のひらだった場所にはプニっとした
新しい感触があった。そう、例えるなら、猫の肉球のような。


吾輩は猫である便意はもう、ない。


解散!